医療の選択

 病気になるといろんな場面で医療の選択を迫られますが、大切な情報量が少なく適切な選択は難しいのが現実です。後進の方々に何らかの参考になるよう私の経験を述べておきましょう。

1. 病院の選択
 2009年10月に脳内出血が発生した時は救急車を呼びましたが、こういう緊急事態に病院は基本的に選べません。妻は心臓病の持病があり地域の中核的な病院にかかりつけていたのでそのK病院に行くことができました。
 このK病院は救急患者を受け入れる病院で急性期治療専門病院なので一応の治療が済めば退院しなけてばなりません。2ヶ月弱たった時、転院を求められました。病院所属のソーシャルワーカーとの打ち合わせで希望の病院があれば当たってみるとのことでした。それが無ければタイアップしている病院が2つあるのでこれも可能性を当たってうまく行けば紹介するとのことでした。
 この2つの病院とちょっと調べた病院などを下見しましたが付け焼き刃の下見くらいでは外観とパンフレット内容くらいの情報で実態は何もわかりませんでした。結局、紹介の2病院のうち立派でしっかりしていそうなO病院を選び転院しました。

 入院経験のある知人がいればいろいろ情報がはいるのでしょうが残念ながら何のつてもありませんでした。
 あとで気付いたことですが、インターネットに口コミで評判を載せるサイトがいくつかありますが、これも全部の病院が載っているわけではなく、また負の評判は載っていません。しかし良い評判は載っているので多少の判断材料になるかも知れません。妻が転院したこのO病院は1件「リハビリが良い」とのコメントがありました。実際、リハビリのスタッフは熱心で好感が持てました。
 今の医療制度ではひとつの病院に長期間入院を続けることは出来ないようです。転院を繰り返すのは止めたかったので入院時の面接時にある程度良くなれば在宅介護を希望する旨を言っておきました。病院のパンフレットには訪問介護なども行っている説明があり面接時に尋ねても訪問介護可能との答えがあったのでお世話になるつもりでした。
 O病院に入院して1ヶ月経たないうちに介護保険はおりるまでに2ヶ月かかるので早く申し込み手続きをして下さいと催促されました。人工呼吸器は24時間使用し、鼻からは栄養注入の管が挿入されたまま、膀胱には尿排出用のバルーンカテーテルが留置されたままの状態で退院しなければならないのかと愕然としてしまいました。
 介護保険の手続きも具体的なやり方を知らずしばらく放置していましたが、やがて「どういう状態になれば退院できるか」と問われました。それで「せめて呼吸儀が外れるようになれば … 」と答えましたが、まだまだ自宅での介護に大きな不安しか浮かびませんでした。
 そして病院所属のソーシャルワーカーが接見するようになり、知り合いのケアマネージャーがいないので紹介してもらうようになり、ケアマネージャーを紹介してもらいました。ケアマネージャーの段取りで介護保険の手続きや在宅の訪問医、看護師、ヘルパーなどの準備が進みました。
 病院も呼吸儀を装着する時間を少しづつ短縮し自発呼吸に慣れるようにし、リハビリも始まりました。

 結局、O病院には7ヶ月間入院させていただき退院、在宅介護へと変わりました。O病院では胃瘻造設を希望しましたが、病院の方針で胃瘻造設は行わないと言われました。転院して来た患者では胃瘻の患者が入院していました。

在宅介護になってからも膀胱疾患になり救急車を呼びましたが、訪問医の事前手配でS病院へ入院、その後胆嚢が悪くなった時も救急車でS病院へ入院しました。

2. ケアマネージャーの選択
 在宅介護をおこなう場合、ケアマネージャーの選択はかなり重要かも知れません。気心のしれた知人でケアマネージャーをやっている人がいればいちばんいいかも知れません。当初、全く知人などのケアマネージャーはいませんでしたので、とりあえずと思いO病院のソーシャルワーカーに紹介してもらいましたが、そのソーシャルワーカー自体よく知り合ったケアマネージャーがいたわけではなく、以前に退院患者の世話をする際に知ったケアマネージャーの会社に依頼したようでした。
 このケアマネージャーのC社は我が家よりだいぶ遠いところにあり訪問看護や訪問医、ヘルパーなどは熟知したところが無かったようでやっつけで探して手配したようでした。
 痰の吸引器を市の補助金でまかなえる機種を業者と打ち合わせで決めて手配していたところ、C社の責任者がデイケアに行くのにバッテリーでも使用できる機種でなければならないと言って強引に一万円ほど手出しになる機種に変更させられました。デイケアに行けるような状態にまで回復しそうにないと思いましたが、素人の私が判断してもいけないかと思いC社のいいなりになりました。(現在までテスト使用でしかバッテリーを使うことはありません)
 さらにデイケアに行くのに縁側にリフトをリースで取り付け、通路を市の補助を受けてコンクリートで作ろうとC社は手配して見積もりを取りました。ところが車椅子の通る通路だけしか市の補助対象にならないそうで車両が乗り降りに便利なような改造は対象外とのことでした。見積もりも私の知人紹介の工事見積もりより補助を受けてもだいぶ高額でしたので断りました。(私の考えではリフトを取付けなくて玄関の段差は車椅子で越えられると思いましたし実際テストもしてみました。)
 私の印象ではこのC社は自社の利益ばかり優先しているように感じました。またリハビリは週に3回くらいを希望していたにも関わらず、週に1回のまま、催促しても5ヶ月間増えることはありませんでしたのでケアマネージャーを変えるようにしました。訪問看護ステーションの紹介で新しいケアマネージャーに代わってもらいました。そしてリハビリも週に3回行えるようになりました。

 はっきりはわかりませんが医療機関にはグループつながりがあるようで、その中でしか手配が出来ないのではないでしょうか? そのような印象をもちました。評判のいい訪問リハビリの噂を耳にしますがたどり着けませんでした。努力も足りなかったかも知れません。 
 その後、近所のちょっと知っている人がケアマネージャーの資格をとって仕事をするようになったそうですが所属する会社や経験知識はお願いしてみないとわからないでしょう。

3. 訪問医の選択
 どの医師が在宅患者を訪問してくれるのか全く情報がありませんのでケアマネージャーなどにゆだねるしかありませんでした。 訪問医を引き受ける医師は少ないそうで選択肢はほとんどないかも知れません。 訪問医も関係者におまかせでした。
 2年5ヶ月同じI医師にお願いしていましたが昨年末までで、今年はじめより別の訪問医に替わっていただきました。
 訪問看護ステーションの紹介した医師のようでしたので、モンスター・クレーマーになりたくなくて苦情はあまり言いませんでした。(訪問看護ステーションとI訪問医師の医院とは直接の関係はないようです)訪問の看護師に医師の愚痴を言うことはありましたが、どの看護師もI医師のことを悪くいうひとはいません、むしろ熱心な医師との評価でした。 代わってもらえるなら別の訪問医にして欲しいとやんわり言いましたが訪問医を引き受ける医師は少ないとの答えしかもらえませんでした。

 私がI医師のどこに不満があったかを記しておきます。(あくまでも私見です)
訪問が不定期でいつも突然30分前、1時間前の電話であることです。15分前の電話連絡の時もありました。しかも電話連絡の時間と大幅にずれることが多いのです。だいたい水曜日に決まっているらしいのですがどの水曜日かはっきりしていません。土曜、日曜日の朝に遊びに行くついでに訪問があることもあります。

 気管切開部のカニューレ交換や胃瘻の交換など訪問したまま素手で処理し、終わって帰る時に水道で手を洗います。患者や器具に触る前にも手を洗うか置いてあるアルコールスプレーで消毒して欲しいと思います。車を運転しいろんなドアなど手で触っているはずですから。
 はじめてカニューレを交換する時、まだ経験がなかったのかおっかなびっくりのぎこちない手つきでした。(I医院は一応呼吸器科も標榜してあるのですが … 、また左利きのせいがあるのかも知れません )
 以前の記事にも書きましたが、早い時点で気管切開部を閉鎖たかったのですが誠意ある対応をしてくれませんでした。そのうち切開部が上皮化してしまい自然閉鎖は出来なくなってしまいました。それなのに、私がカニューレを抜いてしまっていると、「月末ころには自然に閉鎖します」と言いました。私がネットで見ると切開部が上皮化すると手術で組織を移植しないと閉鎖しないと書いてありましたと言っても無視されました。実際2ヶ月ほどカニューレを外したままにしておきましたが自然閉鎖はありませんでした。

 痰を吸引するカテーテル(チューブ)は大病院では吸引するたびに新品を封を切って、新しいビニール手袋をして使用します。長期入院したO病院では新品のカテーテルを一日消毒液に浸けておいて数回使います。手袋は吸引するたびに新品を使い捨てで使用します。I医院から支給されるカテーテルは透明のカテーテルがこげ茶色になってもリサイクル消毒で使い回しです。色の薄いカテーテルも混ざっているのでかなりの回数再使用されていると思われます。消毒されているとはいえ中が見えないほどコーヒー色に染まったカテーテルは気分的にいやで私は使用せずに捨てたりそのまま返却したりし、ネットで購入した新しいカテーテルを使用しそれをI医院に返却していたりしていました。そうするとやがてこげ茶色のカテーテルは無くなり薄い色のカテーテルだけになってはきましたが、それほど値の張るものではないのに病院間での使用法の差は何なんだろうと今だに胸に引っ掛かっています。

 気管切開部に使用するYカットガーゼもI医院より支給されますが、普通のガーゼを医院でY字にカットしているのでカット部の糸がほつれて糸クズが出て気切部に付着したりします。苦情を言うとメーカー製に変わりましたがカニューレを使用しなくなった頃に一箱支給されたのでほとんど使用しないままとなりました。
 カテーテルを拭くアルコール綿もI医院から支給されますが、普通のカット綿をタッパウェアに入れてアルコール浸けにしたものです。O病院入院中に使用していた市販アルコール綿が薄く使用し易すくケースも片手で開閉でき便利です。I医院支給のものはアルコールの種類のせいでしょうか私の手が荒れるので支給品とは別に自分で購入して使用しています。

 先生は自分から言ったことをよく忘れました。妻の痰が多い頃、診察のあと痰をきる薬を処方しておきましょうと言われてそのままになったことが2〜3度あります。結局たんを切る薬が処方されたことはありませんでした。また痰や血液検査の結果がすぐ来る時となかなか来ない時とありました。たいした問題でもありませんので私もそのままにしておきました。昨年末の検査では痰の状態が気になっていたので催促したら電話で問題がないことを告げられて用件は済んだのですが、あらためてコピー複写の検査結果が看護ステーションより届きました。私が忘れたことにされたようです。

 人工呼吸器は在宅介護になって3〜4日数時間使用しただけで本人が拒否し自発呼吸だけで問題がなくなったので使用しなくなりました。しかし医師の指示でずっと自宅に置いたままとなっていました。人工呼吸器を置いておいた方が医療保険の適用が大きくなるらしいことは聞いていたのですが、邪魔になるのと医療不正になるのではないかと思い割合早い時点で返却したいと申し出たのですが、置いておくよう指示がありました。2年ほど経って業者に引取をお願いしましたがなかなか引取にきませんでした。ケアマネージャーを通して引取りを依頼すると取に来ましたが、先生の許可を受けているのかと少し不機嫌そうに尋ねられました。 ? 何のことかちょっと理解ができませんでした。

 許せなかったのはI医師は妻の命が短いと思っていたらしいことです。昨年、彼は自分から漏らしました。「まあ7年在宅された方もおられましたけど … 」

新旧訪問医の比較
 訪問医を一人しか知らないとわからない事も複数の訪問医を知ると比較ができて違いがよくわかります。

 新しい訪問医M先生はまだ1月9日に一度来られただけです。事前打ち合わせ通りの時間に紺色の国産のワゴン車を運転して来られました。以前のI先生は赤いオシャレなヨーロッパ車でいつも訪問されていました。訪問の車両は本筋ではありませんが仕事に対する考え方や意識が表れているように感じられました。そのことは医院の建物についても言えるかも知れません。M医院は高層集合住宅ビルの1階にある目立たない地味な医院で、I医院は中古ビルをデザイナーがオシャレな外観に改装した医院でロゴマークも作ってあります。私の人生経験からすると一般的に中味に自信のない人ほど外観に金や気をつかいますね。

 M先生はマスクを付けて来られ、ベッド脇のアルコール消毒スプレーを目にするとすぐに手にスプレーして手を揉みました。以前のI先生は全く無関心でしたのでまずM先生に好印象を受けました。
 M先生は、はじめに定期的な訪問検診を望むかどうか尋ねられましたので私は必要な時だけで構わない旨を答えました。以前のI先生は妻の体調の良い時にも先生の都合で突然往診されることがあり私の予定が崩れることがあったからです。


看護師の選択
 看護師はもう患者が選択することはできませんね。病院によって、また病棟によってレベルが違うと感じました。さらには個人によって看護のやり方が異なっていました。
 問題を感じたら、後から家族が補完・修正しておくしかないと思いました。

ヘルパー
 在宅介護になった最初、訪問看護師とヘルパーがセットで看護に入ってもらっていました。この時のヘルパーさんは全くの初心者で訓練もされていませんでした。ご本人は一生懸命されていましたが、よその家でほんのわずかの時間では迷うことも多かったと思います。私の手が空いているので「自分は不要ではないか。」と言い出されて自分から止められました。そして、私がヘルパー役をするようになりました。その後、彼女は看護に目覚められたのか看護学校に通われて看護師になられたと伝え聞きました。